5つのワーキンググループ② 制度の周知1
里親支援とっとり 所長 遠藤 信彦
鳥取県では、里親への委託をよりいっそう推進するため、里親と施設、児童相談所の三位一体で、5つに分かれて考えるワーキンググループを作りました。グループの取り組みを、シリーズで書きたいと思います。
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さまざまな事情で、自分の家庭で暮らすことのできない子どもは、地域において家庭的な雰囲気の中で育つことが望まれます。里親家庭はその最たるものです。家庭での暮らしには、子どもの育ちにおいて、さまざまなメリットがあります。
しかし、公的な子育てを、地域のひと家庭において行うことには、課題もあります。
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里親制度が、一般の方に正しく知られていません。『里親のおうちに行った子は、その家の養子になるのでしょ?』と言う声がよく聞かれます。ある団体が行ったアンケート調査でも、回答者の約半数がこのとおり答えていました。
里親が子どもをあずかることは、イコール養子縁組ではありません。里親には「養育里親」「養子縁組里親」「親族里親」「専門里親」と4つの種別があり、それぞれにそれぞれの役目があります。子どもが、実の親の元に帰ることができない場合、その子どもにとって一生の、本当の、あたらしい家族とつなぐため、4つの種別の里親のうち、養子縁組を希望する「養子縁組里親」にあずけることを検討します。その子と養子縁組里親は、六ヶ月以上ともに暮らし、里親が家庭裁判所に『この子をうちの養子にしたい』と申し立て、審判により養子縁組の成立が決定します。この成立により、「里親と里子」という続柄(つづきがら)から「養親と養子」という続柄になります。
「養育里親」「親族里親」「専門里親」が預かる子どもは、子どもの実の家庭が安定し、子ども本人の育ちのちからがつけば、実の家庭に帰っていきます。養育里親は、子どもや家庭の状況によって、様々な期間、子どもをあずかり、ともに暮らします。子どもの自立までということもあれば、十年や五年、短ければ数週間ということもあります。可愛い盛りの乳幼児期を育て、小学校にあがる前に親元に帰っていく姿を見送るということもあります。あるところでこのことをお話しした際「そんなことって、さみしくないですか?」という質問がありました。当然にさみしい気持ちはあります。もしかしたらもう一生会うことが無いかも知れません。一年経ったら親元に帰るという計画で、二歳のお子さんを預かった養育里親が、子どもが無事帰った後、思わずその子の名前を呼んでしまったり、一緒に遊んだ公園で、思わず立ちすくんでしまったりしたという話があります。
しかし、養育里親は、その子どもと、子どもの家族が落ち着くまでの、代理の養育者です。その子の育ちを信じ、もしこの先、何か心配事があろうとも、自分のいっときの育てがその子の一生の力になっていて、乗り越えられるよう信じて、お家に帰っていくのを見送るのです。
海外では、養育里親による養育は一時期であるのだから、里子と里親は愛情の絆を築かないようにしましょう、という方針の国があるそうです。日本では、ほんのいっときであろうとも、精いっぱい愛情を注ぎ、涙で別れるという営みがあります。ささやかなさみしさを感じながら、養育里親は、また訪れる子どもの受け入れの支度をするのです。
(5つのワーキンググループ② 制度の周知2 に続きます)
(この文章は、鳥取こども学園発行学園だより52号の原文です)
2022.12.28