整理整頓のこころがけ
里親支援とっとり 所長 遠藤 信彦
以前、児童養護の要職をつとめられている方に、里親研修の講師をお願いした際、講義の最後に、こんなお話をしてくださいました。
「児童養護の部門につとめ始めたころ、子どもと家庭のさまざまな困難に向き合うことについて『これはとてもハンパな姿勢で取り組めるものではないな』と痛感し、こころがけを決めようと思い立った。いろいろと勉強してまとめたところ『整理・運動・感謝』の3つに辿り着いた。
『整理』については、持ち物、ノート、机の上はもちろん、業務内容や根本的な仕事の仕方、生き様、などなどを整理整頓し、なにごともスムーズに効率的に、ことがすすめられるようこころがけている。
『運動』というのは、身体は、こころのいれものだから、まずいれものがしっかりしていないと、こころが揺さぶられると思った。なので、身体を鍛えることにした。わりあい続けられており、今でも、アマチュアの大会などに出場している。
『感謝』については、そのままの言葉。うちは仏教の家なので、仏壇を掃除し、線香をたて、唯一覚えている簡単なお経を唱え、いま自分と家族がすこやかでいられること、仕事を続けていられることなどを先祖に感謝している」というお話でした。
要職をつとめられている方ですから、雲の上の存在のように感じていましたが、わりあい、新任のころに『これはハンパな気持ちでいられない』と思われたところとか、仏壇を磨かれているところなんかを想像すると、なんだか親近感が湧き、自分もこころがけようと思いました。
『運動』は、『健康』とも言い換えられると思います。『運動・健康』と『感謝』はこころもとないのですが、『整理』についてはがんばって取り組んでいます。いろいろと整理法を読みかじり、『GTD(ゲッティングシングスダン)』というものが気に入っています。気になることや、やらなければならないことを頭の中だけに留めておかず、頭の外の信頼のおける、メモ用紙などに書き出して、信頼のできるコーナー(インボックス、というそうです)にまとめておき、順序を決めたリストの上からひとつずつ取り組む、といったものです。これにより、『あれはどうだったっけ、ああ忘れないようにしなきゃ!?』とか『どこいったっけ?』とか『何からすればいいんだっけ?』といったもやもやに使う、脳とこころの無駄が無くなります。
また、プライベートでは『コーピングレパートリー』という整理法を使っています。すっきりすること、やりたいこと、わくわくすること、夢中になることなどを100も200も書いたリストを作り、常に見ることができるようにする、というものです。この取り組みは、質より量が重要で、人からみてくだらなかったり、些細なことでもよいそうです。これにより、自分の好きなこと(好きだったこと)、楽しいこと、元気になることを忘れずに済みます。ぼくのリストの中には『ペンギンの動画をみる』『ビールの泡のしゅわしゅわや、缶を開けた時の音、匂いを思い浮かべる』なんてのも入っています。
最近行った一番の、整理整頓の大仕事は「鳥取県社会的養育推進計画」の準備でした。今後10年かけて子どもたちの最善の利益の追求に取り組むこの計画の準備では、里親さんの意見はもちろん、行政・施設職員のみなさん、さらには、今、里親家庭で暮らしている子どもたちと、里親家庭を巣立って社会で働いている方たちからお聴きした、鳥取県の里親さんの強みと課題をすべて書き出し整理しました。
誰が何に取り組み、どこから手を付けるのか。当所も、この重要なリストの処理の一端を担います。ペンギンやビールのことばかり考えておらず、気を引き締めなければならないところです。
2020.09.29