イノシシのけものみちに思う | 社会福祉法人 鳥取こども学園社会福祉法人 鳥取こども学園

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イノシシのけものみちに思う

 このごろ、ちまたでクマが出ると話題ですが、我が家のまわりにはイノシシが出ます。きっと両親であろう大柄なイノシシ2匹のうしろに中くらい2匹、そのうしろをウリ坊がとっとこ行進しているさまは、大トトロ中トトロ小トトロのようで愛らしくさえあります。我が家の墓の脇を通り道にしており、土砂が崩れたこともありましたが、今ではすっかり(イノシシ一家の)日常の通路として踏み固められ、きれいに舗装されてしまいました。いわゆる『けものみち』ですね。

 人間の脳の神経は、新しいことを覚えると、のび、つながって、新たなネットワークを作っていくそうです。この道すじは、最初こそ細くて情報が通りにくいのですが、何度も通るにつれ、踏み固められて広くなり、通過する情報の交通量が多くなるそうです。さながらイノシシの『けものみち』ですね。

 このみちは、新たな学びや経験を重ねていくほど、交通網として整備されていきます。便利になればなるほど、近道やバイパスも使えるようになり、問題解決というゴールにたどり着きやすくなります。逆に、道の便利が悪いと、強情で融通がきかない、ということになるそうです。

 フォスタリングチェンジプログラム(以下、プログラム)でも、このことをふまえた関わりを学びます。子どもとおとなが一緒に問題解決法を考える『ストップ・プラン&ゴー』という手法では、猪突猛進に『こうったらこうなの!』と、一本道の行き止まりにぶちあたる子どもに対し、まずは感情を落ち着け『こんな方法もあるかもよ~~??』『相手はこう思ってるかもよ~~?』といったふうに、時にはユーモアも交え、さまざまな考え方を伝えます。この寄り添いにより、子どもは、他の人の気持ちを想像したり、こんがらがった問題点をシンプルにしたり、上手に交渉したり、人と協力したりといったことによる問題解決法を学ぶことができます。

 プログラムでは、子どもにことを教える際は、まずおとなが手本をみせるという鉄の掟があります。おとなは、たくさんのルート候補を柔軟に選択して、問題解決するという生き様を見せねばなりません。脳神経の新しいみちは、年齢を重ね刺激が乏しくなるほど、新しく作ることがしんどくなりますので、おとなが道をしめし続けるには、いくつになっても勉強を続けなければいけないようです。

 イノシシ一家も、良いみちを開拓し、ウリ坊をしっかり先導し、墓石を倒さず車に轢かれず、上手に餌をみつけ、家族仲良く暮らしていってほしいものです。

 

【参考】PRESIDENT Online医学博士奥村歩氏のコラム


2020.09.02