-
第27回『暖かい冬の日に』乳児院 鳥取こども学園乳児部 副院長 竹森香理
世界の各地で新型コロナウイルス感染症が流行し、3月になってすぐに日本各地の小中学などは突然休校となりました。楽しみにしていた行事を自粛したり、縮小したりと子どもや周りの大人たちたくさんの方が困られていると思います。そんな、非日常的な出来事が目の前で起こり戸惑う私たちをよそに、乳児部の乳幼児たちの様子はいつも通り。ただ、遊びに出かける場所が限られてしまい自由度がちょっぴりなくなりました。
3月といえば、乳児部にとっても別れの季節。大きくなった子どもたちは次なる育ちの場へ。お話がたくさんできるようになり大人とのやり取りも一段と楽しめるようになった子どもたち。賑やかな活気のある毎日を届けてくれるのはこの子たちだと感じています。
その子どもたちと1年を通して、“わくわくタイム”という遊びの時間を作り、楽しんできました。公園や海、バーベキューなどワクワクすることをたくさん体験しました。この時間は、子どもたちが普段一緒に生活している職員ではない、ちょっと離れたところにいる職員(おっちゃん・おばちゃん的な関係とでも言いますか・・・)との時間です。
ある暖かい冬の日。行きつけのかにっこ館で遊んだ帰り道。小雨に日差しがまじる(狐の嫁入り)中、車を走らせていると、しばらくして目の前に大きな虹が現れ、「わぁ~」と大はしゃぎする子どもたち。私が、「ラッキーな日だね!」というと、「なんで?(ラッキーなの?)」「なんで?」と。車で追っかけても逃げていく虹に「なんで?」「なんで?」と車中は疑問符だらけ。学園に着いてもまだ出続けている虹にみんなで声をあげて「ラッキー!」と叫ぶ。「これからもいいことあるね。」とお話しながらしばらくの間、空にかかる虹を見ていました。
みんな、元気で心も体も大きく育て!!と願わずにはいられないひと時でした。
2020.03.17
-
第26回『心を寄せて下さるみなさまへ』 児童心理治療施設 鳥取こども学園希望館 副館長 水野壮一
こんにちは。鳥取こども学園希望館の副館長兼女子ブロック長の水野です。
先日、子どもから「水野さんって、何でいつもニコニコしてるの?」と言われました。同じ日に、中学校の校長先生から「あなたからは、何故かラテンを感じるねぇ」とお褒め?頂きました。モットーは「明るく楽しく」で、物事のいい面を見て、楽天的に生きていきたいと考えています。(それゆえ、軽率な失敗が多いのが悩みの種ですが…)
明るさだけが取り柄?
そんな私ですが、希望館にたどり着いた子どもたちの、理不尽な体験から来る悲しみや怒り、彼らの努力だけでは容易に解決できない悩み、それに寄り添い続ける職員や保護者の方々と向き合っていると、時折、本当につらくなることがあります。
また、「自己責任論」「リスク管理」「働き方改革」「施設不要論」…正論めいた理屈が切り棄てや無理解となり、この世界の、誰も知らない隅っこの暗い場所に希望館がぽつんと取り残され、子どもと職員が苦しんでいる…上手く表現できませんが、身震いするような悔しさや寂しさに覆われてしまう時もあります。
悩むゴリラの図
そういう感覚に陥ってしまったときは、学園や希望館に心を寄せて下さる方々のことを思い出すようにしています。
子どもたちに温かく声をかけて下さる地域の方々、ボランティアに来てくださる人の顔を浮かべます。
学園だよりの寄付者一覧をゆっくり眺め、寄付のおかげで建てることのできた園内の建物を一つ一つ見て回ります。
子どもたちを大切にしてくださる学校の先生や関係機関の方々との、協働と連携の歴史を振り返ります。
私はクリスチャンですので、鳥取教会で毎週の礼拝に集う信者のみなさんの学園への祈りと愛を思い浮かべます。
また、学園に出入りする業者さんの働きぶりを思い出したりします。
そして、学園を巣立っていったOB.OGの名前を一人ずつ呟いてみます。
すると…あら不思議!楽天的な私は「うん、色々と大変だけど、希望館の未来は明るい!!」と心が晴れ、明るく楽しい希望館の実現に、また一歩踏み出そうと思うのです。
学園、希望館に心を寄せて下さる皆さんに心から感謝を申し上げます。
鳥取こども学園希望館
副館長・女子ブロック長 水野壮一
2020.02.13
-
第25回『2020年・新年のご挨拶』 社会福祉法人鳥取こども学園 理事長 藤野 興一
『主の力が働いて、イエスは病気をいやしておられた。すると男たちが中風を患っている人を床に乗せて運んで来て、家の中に入れてイエスの前に置こうとした。しかし、群衆に阻まれて、運びこむ方法が見つからなかったので、屋根に上って瓦を剥がし、人々の真中のイエスの前に、病人を床ごとつり降ろした。イエスはその人たちの信仰を見て、『人よ、あなたの罪はゆるされた』と言われた。』(ルカによる福音書5章17節~20節)
『わたしの兄弟であるこのもっとも小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである。』(マタイによる福音書25章40節)
明けましておめでとうございます。
子どもたちと共に2020年の新年を迎えることができました。
鳥取こども学園は、戦後74年、創立以来114年目の新年を迎えます。感謝です。
今、世界中で子どもたちが飢えや暴力で殺され続けています。日本では、誰でもよかった殺人事件が繰り返され、虐待死事件も全国各地でエスカレートしています。
緒方貞子さん、中村哲さんなどの偉大な実践家をなくしました。今の世界は「自然」や「心」より「物」を優先させる1930年代の二度にわたる世界大戦前夜に酷似する様相を呈しています。
今必要なのは、高い精神性に基づいた現場主義であり、正義と平和のために生身の民衆と共に歩む実践です。
昨年、私は12月にカナダのアドボカシー事務所のアーウィン・エルマンさんを迎えた子どもたちが中心となって行った集いは感動的で大きな勇気をもらいました。改めて子どもたちや職員や支援をくださる方々の素晴らしい力を確信しました。支え続けていただいた皆さんに心からお礼申し上げます。
子どもたちのためにではなく、子どもたちと共に一緒に考え、一緒に寄り添いながら、希望をもって、神様の賜物を平和と正義のために磨き使いたいものです。今ほどそのことが求められている時はありません。皆様の上に、神様の豊かな祝福と何よりも子どもたちの幸せ、世界平和実現に一歩でも二歩でも近づくよう祈念して新年のご挨拶といたします。
2020.01.11