第38回 『新年度を迎えて、改めて感謝を伝えたい』 社福)鳥取こども学園 業務執行理事・児童養護施設長 田中佳代子
今年も学園前土手の桜並木は華やかに風情を醸し出してくれています。
鳥取こども学園(理事長 藤野興一)は法人115年の節目に当たり、栄えある『石井十次賞』をいただくこととなりました。115年間、鳥取こども学園に子どものいない時はなく、子どもたちや施設出身者、歴代職員、地域の皆様方の力添えを受け、創設者であるクリスチャンの精神『愛』を大切に守り、神様に見守られて歩ませていただけたことに改めて感謝を伝えたいと思います。新年度を迎え、今一度襟を正して今後も歩みますので、皆様のご理解・ご協力・ご指導よろしくお願い致します。
春は、別れと出会いの季節。児童養護施設:鳥取こども学園も3月末から県外への進学、就職自立、家庭復帰と子どもたちを見送る日々が続きました。前年度は、家庭復帰の子どもが例年より多く、5人の卒園と11人の家庭復帰で、一気に16人もいなくなり、例年にない寂しさを感じています。とはいえ、すべての子どもたち・保護者に「つながり続けさせてください」とお願いしており、今後も折りに触れ、私含め職員が見守らせていただけることが喜びです。皆の新しい歩みが幸多きものとなるよう祈ります。
法人が営む他の事業(児童心理治療施設や乳児院含む13事業)も、同じく新たな気持で新年度を迎えています。全国・世界中どこでも同じ状況だと思いますが、昨年来のコロナ禍で、いろいろなことが様変わりしてしまいました。学園も行事はすべて中止、県外出張もなし、不要な外出の自粛等、人との交わりが極度に減り、リフレッシュの機会やコミュニケーションを取る場面が減りました。マスク着用の日常で相手の表情も読みづらくなり、感知能力も低下したのではと心配します。先日、飲み物を口にするためにマスクを外した職員の顔を久しぶりに見て『こんな顔していたかな。むくんでいるのかな。』と思わず感じた時、これは一大事と思いました。久しぶりに会った地域小規模児童養護施設の子どもの顔がお姉さんらしくなったと感じた時もそうです。当たり前にわかっていたつもりがわからなくなっているのではという不安です。ホーム職員は子どもたちがコロナによる不便さを感じないように、自然を相手に活動したり、楽しみの場を提供するなど、『よく考えるなぁ』と感心する寄り添いをしてくれており、感動と感謝の連続です。今年度はコロナ感染予防だけに終始するのではなく、『どうしたら出来るか』という視点のもと、新たな動きを模索したいと思います。
『ピンチはチャンス』という言葉があります。
子どもや保護者の問題が浮上した時は、子どもや保護者と距離を縮める絶好のチャンスでした。同じ視点で『ピンチ』を『チャンス』に換える前向き思考を持ち、多彩な職員の力を借りながら、当たり前の生活を少しでも取り戻す年に出来たらと思います。
私個人は、学園生活45年目と節目の年となりました。
多くの子どもたち(OB・OG)に支えられ、多くの子どもたちや保護者、そして職員と紡いだ数々のドラマは私の財産であり、鳥取こども学園を愛する基盤となっています。微力ではありますが、慈善事業時代から子どもたちに寄り添い続けてきた歩みをしっかりと若い力に伝えていきたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願い致します。
2021.04.03