-
第71回🎄『次なる養育者へのバトン』🎅乳児院 鳥取こども学園乳児部 副院長 渡 美由紀
「幼い子どものゆたかな育ち」応援助成事業により今年も6人の幼児の七五三のお祝いを実施することができています。
この事業は、株式会社ストームレーベルズ(レコード・映画制作会社)からの寄付をもとに、社会的養護施設等(乳児院、里親家庭、ファミリーホーム)で生活する児童のゆたかな育ちを応援することを目的として、子どもたち一人ひとりが成長後、自らの生い立ちをたどることができ、自らの糧として社会的養護施設等での育みをふりかえることができるよう、七五三のお祝い費用の一部を助成してくださる事業です。ちなみに株式会社ストームレーベルズはご存じの方もいらっしゃるとは思いますが、嵐、SUPER EIGHT、KAT-TUN、Hey!Say!JUMP、なにわ男子が所属するレコード会社です。このような取り組みもされているとは、まさに感謝カンゲキ雨嵐です!!(笑)
毎年この事業の案内が来ると対象の児童をピックアップし、フォトスタジオでの撮影日と神社に参拝する日を保護者と打ち合わせます。今までの子どもたちはフォトスタジオでの撮影で緊張して固まったり、泣き出したりしてしまう子どもが多かったのですが、今年の子どもたちは違います。さすが現代っ子!! 写真慣れしており、すぐにカメラマンのお姉さんにも慣れてポーズを取り、笑顔が溢れます。自分からポーズを決めて「撮って」と言う子まで・・・。
そんな素敵な写真が納められたアルバムが先日手元にやってきて皆にお披露目されました。「かっこいいでしょ」「これ○○くんだで」と鳥取弁丸出しの得意顔で教えてくれます。衣装も和装と洋装があり、子どもたちが自分で「〇色のがいい」と着たいものを選んだそうです。また、神社への参拝時もウロウロすることなくじっと座って神妙に祝詞を聞くことができたというエピソードに写真を見ながら「大きくなったなあ」と感慨深く、目頭が熱くなりました。
このような貴重な機会をいただき心より感謝申し上げます。この七五三のアルバムは子どもたちの大切な成長の記録の1ページとなり、乳児部を巣立つ際に次なる養育者へのバトンのひとつとして繋いでいきたいと思います。
追記:前回の私のリレーブログ(2022年10月26日寄稿)でご紹介した「さつまいも」の行く末ですが・・・(覚えていらっしゃる方はいないかもしれませんが・・・)
新しい年を迎えた頃には姿はなく、どこかへ旅立っており・・・私は見届けることができませんでした・・・残念!!鳥取こども学園乳児部では、Amazonの「乳児院支援プログラム」に2023年11月1日より参加しております。
以下、全国乳児福祉協議会会長のメッセージ抜粋になります。この度、アマゾンジャパン合同会社と「乳児院支援プログラム」を立ち上げることとなりました。Amazon.co.jpの「ほしい物リスト」に、子どもたちに必要なものを載せることによって、Amazon.co.jp利用者の方々がそのリストをご覧になり、ご賛同いただいた方々からご支援いただけるというAmazonならではの仕組みです。この取り組みを通じた支援によって、乳児院で生活する子ども一人ひとりの成長に向けた安全で豊かな環境の整備と養育につながっていくことを期待しています。またより多くの方が乳児院を知っていただくキッカケきっかけとなると大変嬉しいです。家族と離れて暮らす子どもたち一人ひとりが安心・安全な生活を送るために、みなさまよりあたたかい
ご支援を賜りますようお願い申しあげます。
2024.12.18
-
第70回 😌『伝えるために大切にしていること』😌 児童心理治療施設 鳥取こども学園希望館 館長 水野 壮一
衆院選挙があったので、ネットで政治に関する記事を読む機会が多かった。ある日、スマホで記事をスクロールしていくと「投票マッチング」なるサイトが表示された。「あなたが投票すべき政党が分かりますよ」というサイトらしい。
票を入れない政党は決まっているが、入れたい政党が見つからない「ほぼ無党派層」の私なので、さっそく興味本位でサイトを開いてみた。エネルギー政策、憲法改正、少子化対策などにまつわる質問が次々と表示され、回答を選びタップしていく。20問以上設問があるのだが、興味本位で始めたため徐々に億劫になって回答が適当になる。「政策金利?よく分からん!」などと呟きながら回答を入力し終えると、マッチング結果に「あなたの考えとマッチしたのは○○党です!」と自分では入れないと決めている党が表示され驚いた。(おそらくテキトーに回答したからだ)驚くと同時になんだか小馬鹿にされたような気になって、思わず「お前にわしの何が分かるんじゃ」とスマホに小声で文句を言ってみる。
ふと、「前もこんな気持ちになったな…」と記憶がよみがえる。
ネットで流行った性格診断。自分の性格が分かり、仕事や生活に活かせるとのことだったが、「飽きっぽくてお調子者。しかも無駄に繊細で傷つきやすい」などと何の役にも立たない診断結果を表示するスマホに文句を言った。大学生の時に受けた職業適性検査では「営業職に向いている。福祉従事者として適正は低い」と示されカチンときた覚えがある。(適性検査結果を知った大学の就職課には、ずいぶん心配された)自動車学校で受けた運転適性テストでは「気性が荒く事故を起こしやすい」と出て、「気性まで聞いてないんじゃ!」と荒ぶった気がする。共通するのは顔が見えず感情を持たないものに、自分のことを分かったように示されるのが苦手だということ。(もちろんデータ集積や研究によってある程度の信憑性があることは理解しているが)振り返って「自分自身はどうだろう?」と考えてしまう。人と人が向き合って悩みや喜びを分かち合あう学園・希望館において、子どもや職員さんに色々と伝える機会が多いからだ。
例えば「あなたの長所/短所は○○だね」と示したり「してください/しないでください」と求めたり、「本当にこのままで大丈夫?」と予測や心配を伝え、アイデアを出したりすることがしばしばある。きっと「水野さんに何が分かるの?」とか「あなたには言われたくない!」という感情を抱く人もいるだろう。
相手に示し、求め、理解を得るには、誠意とデリカシーが大切だと痛感する。デジタルなネット診断などとは違い、私たちは目を合わせ、声を響かせて伝え合えることが強みである。そして、相手の立場や心情に寄り添い、謙虚で丁寧であることが大切だと考える。正論・正解であっても、伝え方を間違えて相手にドン引きされては意味が無いのだ。その一方で、これは容易ではないことも多くの経験から学んできた。人に何かを伝えるときに、いつも思い出す聖書の一節がある。
マタイによる福音書7:1~6
人を裁くな。あなたがたも裁かれないようにするためである。あなたがたは、自分の裁く裁きで裁かれ、自分の量る秤で量り与えられる。
あなたは、兄弟の目にあるおが屑は見えるのに、なぜ自分の目の中の丸太に気づかないのか。兄弟に向かって、『あなたの目からおが屑を取らせてください』と、どうして言えようか。自分の目に丸太があるではないか。
偽善者よ、まず自分の目から丸太を取り除け。そうすれば、はっきり見えるようになって、兄弟の目からおが屑を取り除くことができる。何度読んでも「その通りだ」と強く思う。そして「でも、難しいことだなぁ」という感情が沸き上がる。「心がけ」程度の軽いものではなく、「生き方」とする必要があるのだと考える。(だから聖書に書いてあるのだろう)
そんなことを色々と考えながら投票日を迎えた。投票所に着いた瞬間に「投票所入場券」を忘れたことに気付き「あっ!」と焦っていると、柔和な受け付けの人達が「大丈夫ですよ」と選挙人名簿を確認して投票用紙を渡して下さった。対応してくれた人たちは優しく誠実で、わすれんぼうの私におが屑も丸太も無く助けてくれたことに感謝した。
そして、自分で考えて選んだ政党に投票した。
2024.12.02
-
第69回 『🍎おいしいものが食べたい🍏』幼保連携型認定こども園 鳥取みどり園 園長 西垣 恭子
園の畑や園庭に設けた袋の畑で四季折々の野菜を育て、食すことを楽しんでいる本園の子どもたち。給食の先生が作ってくださる納豆ボールも大好物の子どもたち。美味しいものを食べたいという子どもたちの食への欲は、生きる力の原動力となっていることを実感する毎日です。
神様が下さる自然界の実りが嬉しい秋、鳥取みどり園に食欲の秋がやってきました。乳児棟横のはっぴー農園(子どもたちの畑)には、幼児部の子どもたちが春にさつまいもの苗(紅あずま)を植え、自分たちの仲間のように可愛がり大事に育ててきた苗が大きくなり、長い蔓が元気に伸びています。
この畑ですが、学園の敷地内に在り山からは遠い場所にあるにもかかわらず、夜な夜な猪や猿がやってきて収穫前の根菜類を全部食べてしまうことから、以前は使用を断念していました。しかし、2年前より畑の横のグラウンドを芝生化にし、芝刈りを芝刈り用ロボットに任せるようにした所、深夜の暗闇の中、きらりとライトを光らせながら静かに芝を刈り続けるロボットの光が怖いのか、芝生化以降、野獣はやって来なくなり、今年も無事にさつまいもが収穫できそうです。子どもたちに人気のさつまいも料理は何と言ってもやき芋が一番です。熱々の焼き芋を口にし、喜ぶ子どもたちの笑顔が目に浮かんできます。フーフーしながら早く食べたいです。また、このはっぴー農園には、平成25年度の卒園記念品として頂いた記念樹で今年11歳になった青リンゴの木も元気に大きくなり、毎年頑張って実を付けてくれます。今年も収獲時期を迎えた先日、年長児がいざリンゴ狩りへ! その時の子どもたちの心理は写真では紹介できませんが、実った48個のリンゴの内、どれが食べたいか、一つ一つの実をじっくりと見つめ、違いをみつけようとする真剣な姿はとても可愛く、その時その時の「今」を子どもたちは全力で楽しんでいることを嬉しく思った時でした。
収穫したりんごは、さて、どうして食べようか? 31名の年長児みんなで話し合った結果、収穫感謝祭礼拝の祭壇にお捧げする分は残しておき、残りはジャムにすることに決定! 鍋で半日コトコト炊いて氷砂糖を入れると、とっても美味しそうなジャムの出来上がり。さっそくおやつの時間にパンにたっぷり塗ってサンドイッチにして食べました。瑞々しくって甘くってしっとりとしていて…。美味しいものを食べたいという子どもたちの欲求はきっと、100%満たされたことでしょう。
創立よりキリスト教保育を行っています本園にとって、11月に行う「収穫感謝際礼拝」は大事にしいる行事の一つであり、この行事を通して子どもたちは、自然の恵み・命をあたえてくださる神様に感謝し、収穫の喜びと恵みを、みんなで分かち合うことを覚えます。本園では毎年、秋が深まる中旬頃の1週間を「収穫感謝祭週間」とし、感謝祭を行う意味を子どもたちに知らせ、地域のお世話になっている方々にお礼の手紙を書いたり、祭壇にお捧した野菜や果物を届けたりするなど、収穫に関わる様々な活動を進めていきます。
そんな1週間の中でも特に楽しみなのは、異年齢チームのみんなで隠し味になるものを決め調理する『隠し味ブレンドカレー』づくりです。昨年はチョコレートを入れたカレー、バナナと塩を入れたカレー、綿菓子を入れたカレー作りに挑戦。それぞれに微妙な味ながらも一工夫した自分たちオリジナルのカレーはとても美味しく、心も身体も満たされる嬉しい食育の体験となりました。
今年は14日に隠し味となる食材を買いに行き、翌日に作るよう予定しています。今年の子どもたちは何を隠し味と考えるのでしょう。とてもわくわくしてきます。
本園の教育・保育の重点目標は、本園の恵まれた緑あふれる自然環境と広々としたグラウンドを活かした『健康な身体づくり』です。食べる力は生きる力です。美味しいものを食べ、食べることを喜び、元気な心と体でいっぱい遊び、心豊かに育ってくれることを願う秋です。
2024.11.17