里親によるショートステイ・トワイライトステイに思うこと①
里親支援とっとり 所長 遠藤 信彦
親御さんの病気など、急なことで子育てがむずかしいとき、いっとき子どもを預けることができる「子育て短期支援事業(ショートステイ・トワイライトステイ)」(以下ショート等)という、市町の取り組みがあります。
昨年度、法律がかわり、このショート等を、どんどん里親さんに受け入れてもらおうという方針が打ち出されました。
ここに至るまで、また、至ったのち、さまざまなドラマがあります。シリーズで書きたいと思います。
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平成26年の秋のこと、倉吉市役所こども福祉の、あるスラッとしたさわやかな職員さんが、里親会中部部会の行事やサロンに、足しげく通われてきました。芋を掘る最中、芋カレーを食べたあとのおしゃべりのときなど折々に、中部部会の里親のみなさんに熱く頼まれました。
「ひとり親家庭に急なことが起こったときなど、子どもを預けるところが少ない。地域の子育て支援をもっと充実させたい。協力してもらえないか」とのことです。
このころ、ショートステイ・トワイライトステイは、施設に預けるのが原則でした。里親は『県』行政の登録であり、児童相談所が子どもを『保護』し、里親や施設に預けることは『県』行政の仕事ですので(※1)、市や町が、里親にいっときの預かりをお願いするためには、遠回りに込み入った段取りが必要でした。広大な土地に対して施設が少ない北海道くらいでしか取り組まれていなかったようです。
中部部会のみなさんも熱いものですから、職員さんのそのこころざしに賛同し、受け入れ手の名乗りがたくさんあがりました。しかしその盛り上がりもつかの間、さわやかな職員さんが惜しまれつつ異動されてしまい、話は立ち消え、熱も冷めてしまいます。
時は過ぎ令和を迎えるころ、里親会伯西部会と米子市役所、東部部会と鳥取市役所が熱心な協議を重ね、里親によるショート等預かりを開始します。里親会が切り出したか、市役所が切り出したか、どちらが先というより、市役所さんの、地域子育て支援を充実させたいという想いと、里親さんの、地域に貢献したいという想いが化学反応を起こし、自然発火したように聞いています。中部部会は「うちが先だったのに!」と言ったか言わずか、再度倉吉市に協議をもちかけ、満を持してスタートを切りました。
このようなチャレンジングの試行錯誤と紆余曲折は、全国各地でもみられました。東京都中野区の区民団体が考えた、保育園送迎や親御さんの外出時の預かり(ファミリーサポート)から、ショートステイ里親へ、そして、保護児童を長年預かる里親へ、というキャリアアップのアイデアは、東京大学主催の地域起こしアイデアコンテストで優勝します。福岡市西区は、「ショートステイ里親からはじめてみませんか?」というコマーシャルを打ち出し、里親に興味がある方の耳目を集めます。
きっとこの、鳥取県も含めた、全国各地の盛り上がりをみとめたのでしょう、ついに令和3年4月、国が制度を見直し、児童福祉法を改正し、市や町がスムーズかつ積極的に、里親さんに子どもの預かりをお願いできるようになりました。(つづきます)
※1 鳥取県の場合。他の都道府県では指定都市・中核市・児童相談所設置市(特別区)が里親制度を運営しているところもある。
(この文章は、鳥取県里親会東部部会発行「東部里親だより号外」に掲載されたものの原文です)
2022.06.28